第 6 話:株式売買の判断方法(1997.12.01 初版,2005.08.04 改訂) |
第 1 話にて,あなたと私が共同で設立したカジュアル衣料店「株式会社ユニシロ」が,第 4 話にて証券取引所に上場されました.いったん上場されると,市場価格がコロコロ変わって,まあ,忙しいこと.投資家の多くが市場価格の動きに釘付けになっちゃいます.ただ,市場価格の上下に一喜一憂してるだけじゃあ,たぶん報われません.なぜなら,市場価格はいい加減だからです.例えば,海外市場の大暴落だの何だのくらいで市場価格がズドドーンと下がっちまうこと自体,そのいい加減さを物語ります.そんなものに惑わされちゃあいけません.やはり,自分なりの基準で投資価値を見極めれるのが,投資家としての理想像.例えば,市場価格 10 円でも高過ぎる株式もあれば,市場価格 1,000,000 円でも安過ぎる株式もあります.そういうのが判断できれば,市場価格が安過ぎるときに買って,高過ぎるときに売って,儲かりま〜す.\(^▽^)/ わーい.
以下では,(株)ユニシロの株式を例に,財務分析で安全性を測りしつつ,資本,配当金予想,当期純利益予想,利子率予想,市場価格などが時々刻々と変化したときに,それぞれの時点でどのような売買判断を下すべきか,考えてみましょう. まずはと,財務分析で安全性を測り,買い検討に値するか否か判定します.まあ,予選のようなものです.ここでは,第 5 話で紹介した幾つかの指標のうち,当座比率を利用しましょう.どのように利用するかというと,基準値 Q (> 0) を予め決めておいて,
と機械的に判断するのです.例えば,Q = 130% と決めたとしましょう.(株)ユニシロの貸借対照表を参照しながら,うぉりゃあ!
と計算してみました.どうです?基準値 130% をナンボか上回っているのがお判りでしょう.まずは安心ということで,買い検討を続けましょう. では次にと,買うタイミングを考えます.ついでに,その先の売るタイミングも考えちゃいます.ここでは,第 4 話で紹介したもので,純資産法,収益還元価値法,配当割引法を折衷した折衷法を使います.折衷投資価値を導くために必要なデータは,資本,配当金予想,当期純利益予想,発行済株式数,利子率予想,市場価格.これらの時系列が,下表のようになったとします.
ここで,資本に関しては,前期決算の確定値を使います.もし中間決算や四半期決算で判明した最新の金額が大きく変化するようであれば,そちらの金額を用いた方が良いでしょう.ただ,通常,期の途中で資本が大きく変動することはありません.配当金予想,当期純利益予想に関しては,当期の最新情報を使いましょう.特に,当期純利益予想は,期の途中で大きく変動しやすいので,要注意です.発行済株式数に関しては,何もなければ前期決算の確定値で良いのですが,株式分割,自己株式買入れ,自己株式売出しで大きく変わる場合があるので,そういう場合は,最新のものを使います.以上の資本,配当金予想,当期純利益予想,発行済株式数は,決算短信・中間決算短信・業績予想修正や会社四季報 CD-ROMなどから入手します.利子率予想,市場価格に関しては,(上表では便宜的に利子率予想,市場価格とも月 1 回の更新としていますが,)日々最新のものを使いましょう.利子率予想は,日経公社債インデックス長期債の値をそのまま使えば良く,日本経済新聞から入手します.さて,上表の数値から,純資産価値,配当割引価値,収益還元価値を計算し,さらにそれらの折衷投資価値を計算してみました.ジャーン!
ここでは,折衷法の計算の際,α=0.3,β=0.6 としています:
折衷投資価値と市場価格の時系列が出揃ったところで,これらを 1 つのグラフにプロットしてみましょう.
このグラフで,水色領域は,投資価値が市場価格を上回った時期,ピンク領域はその逆の時期.ということは,大雑把に言って,水色領域は買い時で,ピンク領域は売り時です.もうちと話を解り易くするために,新たな指標を導入しましょう:
です.先ほどの表 2 つから,この投資価値市場価格倍率の時系列は,下表のようになります.
これをグラフにプロットしてみましょう.
このグラフで,水色領域,ピンク領域の意味するところは,先ほどの投資価値と市場価格のグラフと同じ.ただし,このグラフでは,折れ線が 1 本になっています.その折れ線が 1 を上回るか下回るかが,買い時,売り時の分れ目です.ほーら,随分と見易くなったでしょ.しかも,投資価値市場価格倍率は割安・割高の度合を表すという貴重なオマケも付きます.これは利用価値大です.どのように利用するかというと,基準値 V b,V s(0 < V s ≦ V b) を予め決めておいて,
と機械的に判断するのです.これ結構効きます.例えば,V b = 2.0,V s = 1.0 と決めたとしましょう.先ほどの投資価値市場価格倍率のグラフにこの水準を書込んで,売買戦略を考えると・・・
売買判断が鋭くなっているのが,お解り頂けるでしょう. さあてと,ちと話が長くなったので,以上の売買判断の過程をまとめましょう. (1) 当座比率の基準値 Q (> 0)及び投資価値市場価格倍率の基準値 V b,V s(0 < V s ≦ V b) を予め決めておいて, (2) 次のフローチャートに通す:
どうです?スッキリでしょう.この (1),(2) の順序は守りましょうねぇ〜.基準値は予め先に決めておかねばなりません.なぜなら,そうしないと,(2) のフローチャートの段になって迷うからです.データが揃っているのに判断で迷うというのは,投資家として,あるまじき行為,愚の骨頂. という訳で,ここまで,(株)ユニシロという一社の株式を売買することだけ考えて来ましたが,実際のところ,当座比率,投資価値市場価格倍率の計算式やそれらの基準値は,全上場会社の株式に共通に使えます.となると,こんなことが出来ちゃいます.まず,全上場会社の株式の当座比率,投資価値市場価格倍率を計算します.そして,基準値で足切りします.そしてそして,しぶとく残った株式を,当座比率,投資価値市場価格倍率の適当な評価関数で順位付けしちゃいます.ここまで来ると,どの株式から優先的に買って行けばいいのか,もはや自明. (-ー- ) フフフっ.この辺りに関しては,次回のお楽しみということで・・・
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