付録T:株式投資の情報源

(1998.06.16 初版,2004.07.11 改訂)


私が主に使っている情報源は,決算短信・中間決算短信・業績予想修正有価証券報告書・半期報告書会社四季報 CD-ROM日本経済新聞YAHOO! ファイナンス(またはそれと同等のもの)です.情報内容の他,入手の容易さ価格の手頃さなどを考慮して,こういう組合せにしています.ただし,これは現時点でのこと.今後,インターネットや CD-ROM,DVD を媒体として,優れた情報源がまだまだ出て来るかも知れません.

以下に,主な情報源と内容・機能との対応をマトリクスにしてみました.

情報源 財務・業績・ほか 株価 コスト
(税込)
詳細度 スクリー
ニング
機能
速報性 時価
速報性
スクリー
ニング
機能
チャート
業務
内容
貸借
対照表
損益
計算書
剰余金
計算書
キャッシュ
フロー計算書
業績
予想
発行済
株式数
決算短信・中間決算短信・業績予想修正 0 円
有価証券報告書・半期報告書 ◎+ ◎+ ○- 0 円
会社四季報 CD-ROM 5,880 円/季
日本経済新聞 4,383 円/月
YAHOO! ファイナンス 0 円
◎+・・・満足度 120% くらい
・・・満足度 100% くらい
・・・満足度 80% くらい
○-・・・満足度 60% くらい
・・・満足度 50% 未満
・・・そもそも,情報掲載・機能が無,あるいは期待すべきでない

上表から,例えば,以下のような投資業務の流れを作ることが出来ます:

  1. 会社四季報 CD-ROM のスクリーニング機能を活かして,自分の投資基準に合う株式を網羅的に抽出(有望な会社の発掘),
  2. 決算短信・中間決算短信(または有価証券報告書・半期報告書)の詳細さを活かして,これから買おうと考えている投資候補会社の業績・収益力,財政状態を精査し,「やっぱりイイ」と思ったらその株式を買う,
  3. 決算短信・中間決算短信,日本経済新聞,YAHOO! ファイナンス,他から得られる情報を元に,既に保有している投資先の業績・収益力,財政状態,株価を常時監視し.場合によってはその株式を売る.

以下では,各情報源に関して解説します.

  • 決算短信・中間決算短信・業績予想修正(証券取引所など)
    決算短信・中間決算短信 「決算短信」・「中間決算短信」(以下,短信)は,株式を上場している会社など 1 つずつに関して開示される資料で,会社の公開財務情報の源泉・宝庫と言えるものです.上場している会社は,投資家保護のため,つまり投資家への情報開示のため,決算(あるいは中間決算)がまとまった段階で,短信を作成し,証券取引所等に提出し,記者クラブで配布・発表します.元々は,報道機関に決算を発表する慣習から発展した規則・慣行のようです.上場会社の決算・業績予想が世に出るのはこの短信が最初なので,決算・業績予想の速報性でこれに勝る開示資料はあり得ません.以前は,詳細度,情報量において,有価証券報告書・半期報告書に負けている感が強かったのですが,最近は,内容が充実してそれらに迫りつつあります.それから,短信の補足的な資料として,「業績予想修正」があります.これは,業績予想が直近発表のそれに較べて(大きく)異なった場合,直ちに開示されることになっています.短信の予想からずれたら業績予想修正,再びずれたら再び業績予想修正,・・・と,まあ,こんな調子で開示されます.

    長所:

    • 決算,業績予想の詳細度は最上級(有償・無償を含め一般に入手できる資料の中で),
    • 決算,業績予想の迅速性は最上(有償・無償を含め一般に入手できる資料の中で),
    • 何といってもタダ
    • インターネットで閲覧・入手が可能.

    内容:

    • 業績(経営成績,配当状況,財政状態,キャッシュ・フローの状況),
    • 業績予想(売上高,経常利益,当期純利益,配当),
    • 企業集団の状況
    • 経営方針(経営の基本方針,利益配分に関する基本方針,投資単位の引下げに関する考え方及び方針等,目標とする経営指標,中長期的な経営戦略,対処すべき課題,・・・),
    • 経営成績及び財政状態(当期の概況,次期の見通し,財政状態),
    • 財務諸表等(貸借対照表,損益計算書,剰余金計算書,キャッシュ・フロー計算書,財務諸表作成のための基本となる重要な事項,注記事項,セグメント情報,生産・受注及び販売の状況,・・・),

    主な利用目的:

    • これから買おうと考えている投資候補会社の業績・収益力,財政状態の精査
    • 既に保有している投資先の業績・収益力,財政状態の詳細監視

    開示時期:

    • 決算から 2 か月以内の決算発表時(3 月末決算会社ならば 4〜5 月).

    閲覧・入手:

    それにしても便利な世の中になりました.短信は,元々が,報道機関用の資料なので,一般人が入手するには敷居の高い資料だったのです.私の場合,以前,短信を入手するために,大手・準大手クラスの証券会社の支店へ電話で「○○の短信お願いしま〜す」して本店から取り寄せてもらって・・・挙句の果てが,「クミヤさ〜ん,△△投信の××ファンドの募集始めたんですが・・・」みたいなことにお付合いして(T_T)・・・そういう努力やコストも,もはや不要の世の中となりました.

  • 有価証券報告書・半期報告書(金融庁)
    「有価証券報告書」・「半期報告書」(以下,有報)は,株式を上場している会社など 1 つずつに関して発行される冊子で,会社の公開財務情報の源泉・宝庫と言える資料です.上場している会社は,投資家保護のため,つまり投資家への情報開示のため,決算(あるいは中間決算)から 3 か月以内に有報を作成し金融庁長官に提出することを証券取引法で義務付けられてます.内容,長所,利用目的は短信とほぼ同等.詳細度,情報量では短信に幾分勝ります.例えば,「主な資産及び負債の内容」では,主要な営業債権の相手先,金額が開示されていたりします.ただ,最近は,総合的に見て短信に劣っている感があります.短信の内容が充実し有報に追いつきつつあり,開示時期が短信の方が 1 か月以上早く,短信にある業績予想が有報には載っていません.有報の影は,かなり薄くなりました.

    長所:

    • 決算の詳細度は最上級(有償・無償を含め一般に入手できる資料の中で),
    • 何といってもタダ
    • インターネットで閲覧・入手が可能.

    内容:

    • 企業の概況(主要な経営指標等の推移,沿革,事業の内容,関係会社の状況,従業員の状況),
    • 事業の状況(業績等の概要,営業の実績,対処すべき課題,・・・),
    • 設備の状況(設備投資等の概要,主要な設備の状況,設備の新設,除却等の計画),
    • 提出会社の状況(株式等の状況,自己株式の取得等の状況,配当政策,株価の推移,役員の状況),
    • 経理の状況(貸借対照表,損益計算書,剰余金計算書,キャッシュ・フロー計算書,附属明細表,セグメント情報,主な資産及び負債の内容,・・・),

    主な利用目的:

    • これから買おうと考えている投資候補会社の業績・収益力,財政状態の精査
    • 既に保有している投資先の業績・収益力,財政状態の詳細監視
    • 注目会社に関して短信で分からない部分の精査(主な資産及び負債の内容など).

    閲覧・入手:

    • 金融庁 EDINET
      全国上場会社・その他に関して,有報の他,有価証券届出書など,証券取引法に基づいて金融庁に提出された開示書類を閲覧することが出来ます.

  • 会社四季報 CD-ROM(東洋経済新報社,季刊,5,880 円/季(税込))
    会社四季報 CD-ROM 「会社四季報 CD-ROM」は,上場会社総てに関する情報を掲載してます.昔ながらの冊子版の会社四季報を CD-ROM 化しただけに留まらず,情報量・詳細度を大幅に拡充させた上,スクリーニング機能が付け加わりました.会社情報誌のほぼ決定版です.

    長所:

    • 上場会社総てを網羅
    • 上場会社総てのデータが同じフォーマットで載っている(会社比較が容易),
    • 超強力なスクリーニング機能を備え,インターネットからダウンロードした最新株価まで使用可能(例えば,増益予想かつ最新予想 PER 10 倍以下の会社を抽出したり),
    • 過去の決算の情報量は最上級(有償・無償を含め一般に入手できる資料の中で.例えば,財務諸表は 3 年分,業績は 10 年分),
    • 決算,業績予想の詳細度は短信に準ずる
    • 決算,業績予想の迅速性は短信に準ずる
    • CD-ROM 1 枚に収まりコンパクト

    内容は,冊子版を踏襲・凌駕し,各会社ごとに:

    • 業務内容
    • 貸借対照表等(総資産,流動資産,当座資産,現金預金,受取手形・売掛金,有価証券,棚卸資産,その他流動資産,固定資産,有形固定資産,無形固定資産,投資等,繰延資産,負債,流動負債,支払手形・買掛金,短期借入金,1年内償還社債,その他流動負債,社債,長期借入金,その他固定負債,株主資本,資本金,新株払込金,資本準備金,利益準備金,剰余金,長期営業債権,借入金,有利子負債,手形割引・裏書譲渡高,保証債務等,減価償却累計額,有価証券等含み損益,・・・),
    • 損益計算書等(売上高, 売上原価,売上総利益,販売費・一般管理費,営業利益,営業外収益,営業外費用,経常利益,特別利益,特別損失,税引前利益,法人税・住民税等,当期利益,事業利益,受取利息配当金,支払利息割引料,金融収支,次期繰越利益,配当金,・・・),
    • 諸比率・諸指標(輸出額・輸出比率・受注高・受注残高・従業員数・平均年齢・平均賃金・1人当たり売上高・1人当たり経常利益・総資産増減率・株主資本増減率・売上高増減率・営業利益増減率・経常利益増減率・当期利益増減率・借入金増減率・従業員増減率・ROA・ROE[期末]・ROE[平均]・総資産回転率・売上高原価率・売上高販管費率・売上高営業利益率・売上高経常利益率・流動比率・当座比率・手元流動性・固定比率・負債比率・株主資本比率・有利子負債依存度・売上高金融費用率・利払い能力・有利子負債利子率・配当性向・分割原資・分割余力,・・・),
    • 業績・業績予想(売上,営業利益,経常利益,利益,利益率),
    • 発行済株式数
    • 株価(高安,チャート),
    • 主要株主
    • 役員
    • 近況

    主な利用目的:

    • スクリーニング機能を活用して,自分の投資基準に合う株式の網羅的抽出(有望な会社の発掘),
    • これから買おうと考えている投資候補会社の業績・収益力,財政状態のチェック
    • 既に保有している投資先の業績・収益力,財政状態のチェック

    発売時期は,3 の倍数月の第 3 週で,冊子版と同日発売です:

    • 3 月の第 3 週,
    • 6 月の第 3 週・・・3 月決算会社の決算が載ります,
    • 9 月の第 3 週,
    • 12 月の第 3 週・・・3 月決算会社の中間決算が載ります.

    購入:

    それにしても便利な世の中になりました.私の場合,以前,冊子版を利用していた頃は,会社四季報が発売されるたびに,週末を潰して投資先を探したものでした.ところが今は,会社四季報 CD-ROM を起動して,数式をチョチョイと入れて,あっちゅー間です.お陰で週末は(^o^)

  • 日本経済新聞(日本経済新聞社,日刊,4,383 円/月(税込))
    日本経済新聞 「日本経済新聞」(略称:日経)は,日刊の経済紙として超メジャー.なんてことは言うまでもありません.株式投資家の一日は,日経に目を通すことから始まります(たぶん).上場会社に関する情報の量・迅速性から見て,日経を読まないのは損です(たぶん).

    長所:

    • 決算,業績予想の迅速性は最上級(有償・無償を含め一般に入手できる資料の中で.ときには,短信の一部内容が先に流れることも.情報リークか!?),
    • 上場会社総てを網羅
    • 税制・財政政策,経済統計など世の中全体の経済動向も分かる.

    内容というか,構成紙面の主なもの:

    • 総合(分野を問わず重要なニュースだが,特に経済に影響が大きそうなもの),
    • 経済(経済政策,金融,保険など),
    • 企業(各会社の財務以外の動向など),
    • 企業財務(各会社の業績・業績予想・有価証券発行・自社株買入消却状況・格付など),
    • マーケット総合(有価証券市場の各種指標など),
    • 証券(株式・社債の時価),
    • 商品(各種商品の価格・在庫の状況).

    主な利用目的:

    • 注目している会社の決算,業績予想,その他ニュースをチェック
    • 世の中全体の経済動向を把握して将来の自分の投資行動・人生設計に活かす.

    購読申込:

  • YAHOO! ファイナンス(YAHOO! JAPAN)
    YAHOO! ファイナンス 「YAHOO! ファイナンス」は,(20 分以上遅れますが)比較的リアルタイムに近い株価を FREE で閲覧できるサイトとしては,国内元祖級でしょう.最近は,他にも同等のサービスが増えて,株価情報に不自由しなくなりました.

    長所:

    • 上場会社等総てを網羅
    • 比較的リアルタイムに近いザラバ株価を見れる,
    • 気配値も見れる,
    • ポートフォリオを組んで注目株をまとめて管理できる(値動きを追ったり,通算損益を把握したり),
    • 株価時系列をかなり遡って見れる.

    内容は,各上場会社等(検索は,会社名または証券コードで行います.)に関して:

    • 株価(取引値,前日終値,前日比,始値,高値,安値),
    • 出来高
    • 株価チャート株価時系列(日足,週足,月足,・・・),
    • 気配値(買気配,売気配),
    • 株価関連指標(配当利回り,株価収益率,純資産倍率),
    • 単元株数,
    • 時価総額,
    • 発行済株式数,
    • 決算(1 株配当,1 株利益,1 株株主資本,・・・),

    主な利用目的:

    • これから買おうと考えている投資候補会社の株価・気配値の監視
    • 既に保有している投資先の株価・気配値の監視
    • 自分のポートフォリオ全体の損益把握

    それにしても便利な世の中になりました.以前は,ザラバの株価情報が欲しい場合,証券会社に入り浸ったり・・・これが,お爺さんたちのタバコで煙たいのなんの・・・証券会社からヘンテコな電話を買わされて情報料払ったり,文字放送受信用の高価なアダプターを買ったり,証券会社に電話したり・・・バブル華やかなりし頃はキレイなお姉さんがたくさん営業課にいたので電話するのも楽しかった(^o^)もんですが,バブル崩壊後は海千山千のオヤジが(-_-;)・・・まあ,いろいろ苦労が絶えなかったものです.

  • 会社四季報(東洋経済新報社,季刊,1750 円/季(税込))・日経会社情報(日本経済新聞社,季刊,1,667 円/季(税込))
    「会社四季報」と「日経会社情報」は上場会社総てに関する主要情報を掲載してます.最近は,CD-ROM 版も出版されてますが,価格が安いのと,パソコンの立ち上げ・操作が必要ない点などを考慮すれば,まだまだ冊子版も捨てたもんじゃないのかも知れません.しかし,CD-ROM 版に比べると,情報量・詳細度はかなり落ちますし,スクリーニング機能が欠落しています.昔,CD-ROM 版が無かった頃,私は人力スクリーニングをやってました.が,このやり方はオススメしません.根性と視力と暗算力が頼りのこのやり方は,辛いだけでなく正確さにおいて難があります.パソコン環境とお金がある方には,CD-ROM 版の方をオススメします.

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