付録U:株式投資の基礎科目

(2004.11.22 初版,2006.09.24 改訂)


ここでは,株式投資家として学んでおきたい基礎科目を紹介しまーす.結論から申しますと,会社法簿記財務分析証券分析でーす.あくまでも,投資家(investor = 利益を得る目的で事業に資金を投下する人.)に役立つ科目であってトレーダ(trader = 商人,主として短期売買での差益獲得を業とする人)に役立つ科目ではありませんので,テクニカル分析的なものには全く触れてましぇん.悪しからずぅ.
私が株式投資を始めたのは,1989.12,バブル絶頂期で日経平均株価が史上最高値 38,915 円を付けたときです.当時,私は,青二才(ハッキリ言ってバカ?)でしたから,市況崩壊に呑み込まれるように大きな痛手を被った訳です.当然,その後の選択肢として株式投資から撤退するという手もありました.多くの方々がそうしたみたいです.が,単細胞(ハッキリ言ってバカ?)なので「株で損したら株で取り返すしかあるまい」との一心で,何度も打ちのめされながらも株式投資を続けました.その間,恐らく数千時間の膨大な時間を費やして,株式投資に関していろいろと学んで来ました.私の場合,呑み込みが悪い(ハッキリ言ってバカ?)ので,結局は,「株って何だろう?」,「株に値が付くっちゅーことは,株に価値があるっちゅーことだけど,何故?」みたいな根源的な疑問にまで立ち返るしかありませんでした.当時はインターネットなんて全くの未発達でしたから,週末になると,本屋さんへ行って,その疑問に答えてくれるような本というか分野を探してみました.そして,「こりゃタメになるわい」という結論が,先に紹介した科目です.以下では,各科目に関して説明します.
  • 会社法
    会社法とは,会社に関する規定を定めた法令です.会社法には,株式会社に関する一般的かつ重要な規定が網羅されています.いわば,会社法は株式会社のルールブックです.株主権としての株式に関する規定も,当然ながら,会社法の中にあります.「株式とは何か」を知るためには,会社法の理解が欠かせません.会社法を知ることは株式投資家にとっての義務ではありませんが,会社法をほとんど知らずに株式投資を行うことは愚かでしょう.かつての私なんか,まさにそうでした.株式とは何かを知らずに投資していた訳ですから.そんなの投資と呼べるか?
    会社法の構成は,以下のようになっています:

    組谷くんの会社法お勉強のお薦めコース(時短コース)
    編・章・節・款 勉強する度合
    第 1 編 総則他の条文から参照されている条文など,必要を感じた部分だけ勉強します.
    第 2 編 株式会社 第 1 章 設立条文を一通り勉強します.
    第 2 章 株式
    第 3 章 新株予約権余力が出来たら,条文を一つずつ勉強します.
    第 4 章 機関 第 1 節 株主総会及び種類株主総会条文を一通り勉強します.
    第 2 節 株主総会以外の機関の設置
    第 3 節 役員及び会計監査人の選任及び解任
    第 4 節 取締役
    第 5 節 取締役会
    第 6 節 会計参与余力が出来たら,条文を一つずつ勉強します.
    第 7 節 監査役
    第 8 節 監査役会
    第 9 節 会計監査人
    第 10 節 委員会及び執行役
    第 11 節 役員等の損害賠償責任
    第 5 章 計算条文を一通り勉強します.予め簿記を勉強した後の方が良いでしょう.
    第 6 章 定款の変更余力が出来たら,条文を一つずつ勉強します.
    第 7 章 事業の譲渡等
    第 8 章 解散
    第 9 章 清算
    第 3 編 持分会社自分が利害関係者となった会社形態など,必要を感じた部分だけ勉強します.
    第 4 編 社債余力が出来たら,条文を一つずつ勉強します.
    第 5 編 組織変更、合併、会社分割、株式交換及び株式移転
    第 6 編 外国会社必要を感じたら勉強します.
    第 7 編 雑則
    第 8 編 罰則
    附則

    会社法に関して,逐条解説的なオススメのテキストあります ↓
    本の紹介:会社法入門系

  • 簿記
    簿記とは,事業の資産,負債,資本の出納・増減を一定の形式によって帳簿に記録・計算・整理して,経営成績と財政状態を明らかにする記帳方式のことです.これが,何の役に立つかと申しますと・・・株式を買うっちゅーことは,その株式を発行する会社の資産・負債・資本・損益の持分相当分を背負い込むことになります.なので,会社の財務諸表(貸借対照表,損益計算書など)の理解は欠かせません.その財務諸表を作り上げる作業が,まさに簿記です.なので,簿記を理解すれば,財務諸表を作る過程が解り,会社が公表する財務諸表の理解はもちろん,時には裏読みさえ出来ちゃいます.また,会社法,証券分析の知識と絡めれば,株式の投資価値の計算にも役立ち,市場株価が割安か割高かなんてことも計算できちゃいます.
    簿記には,日商簿記検定という有名な検定制度があります.日本商工会議所が主催する検定試験です.この検定に絡んで様々な教科書,参考書,問題集が出版されているので,それらを利用しない手は無いでしょう.

    組谷くんの日商簿記お勉強のお薦めコース(時短コース)
    試験科目 勉強する度合 日本商工会議所による内容説明(2004.11.21 現在)
    4 級 全く勉強しなくていいでしょう. 簿記入門編.小規模小売店の経理に役立つ.勘定科目に仕訳でき,複式簿記の仕組みを理解している.
    3 級 完璧に勉強しましょう. 財務担当者に必須の基本知識が身につき,商店,中小企業の経理事務に役立つ.経理関連書類の読み取りができ,取引先企業の経営状況を数字から理解できるようになる.営業,管理部門に必要な知識として評価する企業が増えている.
    2 級 商業簿記 高校程度の商業簿記および工業簿記(初歩的な原価計算を含む)を修得している.財務諸表を読む力がつき,企業の経営状況を把握できる.相手の経営状況もわかるので,株式会社の経営管理に役立つ.
    2 級 工業簿記 概略を理解する程度に勉強しましょう.原価要素の分類など,製造業の原価計算の仕組が概観できれば十分です.
    1 級 商業簿記・会計学 テキストを一応買込んで,辞書替りに利用しましょう. 税理士,公認会計士などの国家試験の登竜門.大学程度の商業簿記,工業簿記,原価計算並びに会計学を修得し,財務諸表規則や企業会計に関する法規を理解し,経営管理や経営分析ができる.
    1 級 工業簿記・原価計算 全く勉強しなくていいでしょう.

    尚,試験は受けなくていいでしょう.株式投資に資格は要りません.必要なのは,実用的な知識です.ただ,試験を目標にすると,結果的に勉強に力が入り,トットと覚えれるというメリットはあります.
    次に述べる財務分析を勉強する前に,予め簿記を勉強しておくと,効率的です.

    簿記に関して,オススメのテキストあります ↓
    本の紹介:簿記系

  • 財務分析
    財務分析とは,財務諸表を通して収益性,安全性,生産性などを理解・解析し,会社の経営状態の良し悪しを判断することです.株式を買うっちゅーことは,その株式を発行する会社の資産・負債・資本・損益の持分相当分を背負い込むことになります.投資先が赤字転落したり資金繰りに行き詰まったりしては困りものです.なので,出来る限り,やばい会社は遠ざけ,投資は経営状態の良い会社のみに対して行いたいところです.そういう目利きの技術が財務分析です.
    先に紹介した簿記は,日々の取引を帳簿に記帳して財務諸表を作り上げて行く,ボトムアップ型技術です.それに対して,この財務分析は,出来上がった財務諸表からその意味内容を解釈し行く,トップダウン型技術です.

    組谷くんの財務分析お勉強のお薦めコース(時短コース)
    項目 勉強する度合
    財務諸表(貸借対照表,損益計算書,利益処分案,剰余金計算書,キャッシュフロー計算書) 収益性分析,安全性分析の勉強に入る前に,「決算書の読み方」的なテキストでしっかり勉強しましょう.ただし,予め簿記を勉強している場合,財務諸表に関する知識は十分なので,改めて勉強する必要はありません.
    収益性分析 資本利益率・資産利益率 自己資本当期純利益率を中心にしっかり勉強しましょう.
    売上高利益率 売上高経常利益率を中心にしっかり勉強しましょう.
    売上高費用率 売上高原価率,売上高販管費率を中心にさらっと勉強しましょう.
    資本回転率・資産回転率 売掛債権回転率,棚卸資産回転率を中心にさらっと勉強しましょう.
    損益分岐点比率 損益分岐点比率,変動比率,固定比率を中心にしっかり勉強しましょう.
    利益増減率 経常増益率を中心にしっかり勉強しましょう.
    利益分配率 配当性向,内部留保を中心にしっかり勉強しましょう.
    その他の比率 インタレスト・ガバレッジ・レシオなどキャッシュフローに関するものを中心にさらっと勉強しましょう.
    安全性分析 資産資本構成比率 当座比率,現金比率,自己資本固定比率,自己資本利益率を中心にしっかり勉強しましょう.
    回転期間 買掛債務回転期間,金融債務回転期間を中心にさらっと勉強しましょう.
    生産性分析 労働生産性 上記各項目に較べ勉強の必要性が薄いです.余力があれば勉強しましょう.
    資本生産性

    財務分析に関して,オススメのテキストあります ↓
    本の紹介:財務分析系

  • 証券分析
    証券分析とは,経済学の一応用分野で,株式分析,債券分析,オプション,先物,ポートフォリオ理論,資本市場理論などなどを扱います.私の場合,主として株式の投資価値計算の道具として株式分析の一部を使っています.証券分析は,数式満載でクソ難しい分野なのは確かなのですが,株式分析,債券分析だけを押える程度ならばそれほどの骨折りにはなりませんし,その程度だけでもそーとー役立ちます.株式の割安・割高を自身で数式的(理論的)に判断できるのとそうでないのとでは,雲泥の差です.

    組谷くんの証券分析お勉強のお薦めコース(時短コース)
    項目 勉強する度合
    株式分析 必ずしっかり勉強しましょう.
    債券分析
    オプション オプション取引を行う場合,しっかり勉強しましょう.
    先物 先物取引を行う場合,しっかり勉強しましょう.
    ポートフォリオ理論 興味あるいは必要を感じたら勉強しましょう.
    資本市場理論

    証券分析に関して,オススメのテキストあります ↓
    本の紹介:証券分析系

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