【会社型不動産投資信託の仕組】
それでっと,会社型不動産投資信託の仕組なんかをちと詳しく・・・何はともあれ,図で見てもらいましょう!
上図の左側と下側に関しては,株式会社制度に精通している方なら,直感的に「株式会社制度と similar ねぇ.んー」と思われることでしょう.そう,
投資法人 | ・・・ | 株式会社 |
投資主 | ・・・ | 株主 |
投資口・投資証券 | ・・・ | 株式・株券 |
投資主総会 | ・・・ | 株主総会 |
役員会 | ・・・ | 取締役会 |
と対応させて,株式会社制度のようなもんと考えればいいのです.この仕組の中心になっているのは,投資法人.不動産投資信託の投資法人の特徴として,株式会社には無いものを列挙すると,
- (1) 資産運用以外の営業はできません.
- (2) 本店以外の営業所を設けることができません.
- (3) 使用人を雇用することができません.
- (4) 資産運用,資産保管,一般事務の業務を他者へ委託しなければなりません.
- (5) 資産が,不動産関連資産,現金又は現金同等物に限定されています.
- 不動産関連資産とは,
- 不動産・不動産の賃借権・地上権.
- 不動産,地上権及び土地の賃借権のみを信託する信託の受益権(有価証券以外).
- 不動産匿名組合出資持分.
: (などなど)
- (6) 配当可能所得(≒ 税引前当期純利益)の 90% 超を投資主に配当するなどの条件を満たせば,その配当金を損金参入できます.
というところです.これらに関しては,「投資信託及び投資法人に関する法律」や東証の「上場審査基準」,「上場廃止基準」や「租税特別措置法」で定められています.面白いのは,(2),(3) と (4) です.そう,投資法人は,自分で実務をやっちゃならん運命なのです.
投資主にとって嬉しいのは,(6) です.株式会社等の普通法人なら,配当可能所得の 40% 程度をガッポリと法人税,住民税および事業税として持って行かれて,残った 60% 程度分から株主へ配当します.ところが,投資法人なら,配当可能所得のほぼ 100% を投資主へ分配することも可能なのです.
あとそうそう,東証の基準から特徴的なものを付け加えると,
- (7) 資産の 75% 以上が不動産関連資産.
- (8) 資産の 50% 以上が,安定的賃貸事業収入等を生み出す(あるいは生み出す見込のある)不動産関連資産.
- (9) 上場投資口口数が 4,000 口以上.
- (10) 1 口当りの純資産総額が 5 万円以上.
- (11) 純資産総額が 10 億円以上.
- (12) 資産総額が 50 億円以上.
- (13) 大口投資主の投資口口数が 75% 以下.
- (14) 投資主の数が 1,000 人以上.
これらを見ると,投資口の流動化・小口化,収益力の安定化に東証が気配りしてるのが解ります.
【銘柄選択時のチェック項目】
さてと,不動産投資信託の投資口について,銘柄選択のコツですが・・・(6) の税制を念頭におくと,恐らく,多くの投資法人は,利益をガンガン配当して内部に留保する剰余金をトッテモ少なくするでしょう.となると,1 投資口当りの利益・配当金の成長はままなりません.となるとトナルト,売買益よりも利回りに着目して,
- (a) 1 投資口当りの取引値から見た配当利回りは高いか?
は必須チェック項目.
あとは,目論見書,有価証券報告書あるいは決算短信など開示情報に十分に目を通して,
- (b) 財政状態(当座比率・固定比率などの資金繰り,投資対象不動産の時価評価額)は良好か?貸借対照表などで確認する.
- (c) 経営成績・資産運用効率(1 投資口当り利益規模,営業収益(売上)に対する利益率,資本・資産に対する利益率)は良好か?損益計算書,資産運用報告書,貸借対照表で確認する.
- (d) 投資主への分配は適切か?少な過ぎたりしないか?損益計算書,金銭の分配に係る計算書で確認する.
- (e) 不動産の稼働率・賃料収入は良好で安定しているか?
- (f) 不動産の数・種類が多いか?
と,まあ,こんな所々がチェックポイントで,投資口同士で相対比較すれば良いでしょう.(a) に関しては,一般的な公社債利回りや株式配当利回り・株式益回りとも比較できますね.