立川解散
残余財産分配金が株価を上回った!

(2000.08.28)


東証 2 部に上場していた繊維商社の立川(株)が,昨年 1999.09,臨時株主総会で解散決議をし,上場廃止となりました.1999.10.12 に東証で最後についた株価は 130 円/株だったのですが,会社清算で今年 2000.08 下旬以降に株主へ支払われる残余財産分配金は 202.4 円/株.最後に東証で立川を買った人は「56% も儲かったぜ」状態なのれす.私自身,貸借対照表とにらめっこをして,「立川を買おうかなあ?どうしようかなあ?やっぱ買おうか,う〜ん止めとこ,でもなあ・・・」と悩んだ末,けっきょく買わなかったのですが(チキショー!),今回はその反省を込めて(?),立川解散とその残余財産分配について解説してみしょ.

立川さん,待って〜

まずはと,「なんで,株主に残余財産分配金が支払われんの?」とお思いのお方もいらっしゃることでしょう.実は,株主は,法的に残余財産分配請求権という権利を持ってます.残余財産とは,資産を換価(換金)して,債権者に借金を返済して,負債を 0 にして,最後に残った財産です.この時点で「???」の方は,こっち見てね → 「株式投資入門第 2 話:株主の権利 〜 出資側から見たメリット 〜」.ちと細かいことを付け加えると,商法という法律には「第425条 残余財産は各株主の有する株式の数に応じて之を株主に分配することを要す」と書かれていて,会社の残余財産分配義務みたいになってます.まっ,いいや.

そんで次に,「肝心の立川の残余財産は幾らだったの?」ということになるのですが・・・ここは,時間経過に沿ってジックリと説明致しましょう.

取締役会で解散方針が決議されたのは,1999.07.16 でした.それから 10 日後の 7 月 26 日,衆人環視の中,立川の中間決算短信が開示されました.ここで最も注目されたのは,貸借対照表(バランスシート)の資本合計金額です.

貸借対照表
(↑ 上表をクリックすると,詳細な貸借対照表が見れます.)

上表によると,資本合計金額は 3,199,743 千円.発行済株式数は 14,000 千株だったので,この時点で,

1 株純資産 = 3,199,743 千円 / 14,000 千株 = 229 円 / 株

でした.もし中間貸借対照表に記された帳簿価額通りに資産が換価されるならば,株主は 229 円 / 株の残余財産分配金を受取れる計算です.

しかし,私も含め多くの人は,この時点で「最終的な分配金は 229 円 / 株を相当下回るはず.資産換価は額面を相当下回るだろうから」と思ってました.というのは,中間期から期末までの半年の損益が ▲260,000 千円ほどと見込まれてるし,この他,建物・借地権の計 200,000 千円ほどが評価額ゼロとなるし,建物取壊費用が 200,000 千円ほど掛かるようだし,商品処分損も相当出るだろうし・・・有価証券評価益が 230,000 千円ほどあるけれど・・・という事情があったからです.私は,渋めに最終的な残余財産を 1,600,000 千円程度と見積りました.すると,

1 株純資産 = 1,600,000 千円 / 14,000 千株 = 114 円 / 株

です.私の渋ちん見積りでは「株主は 114 円 / 株の残余財産分配金を受取れる」だったのです.実際,解散決議発表後〜上場廃止までに取引所でついた株価も,それに近い水準でした.(86〜140 円 / 株くらいだったかな?上の 140 円 / 株は,ちと曖昧.ごめんなさい.)

立川さん,痩せ細る

ところが,蓋を開けてみると,残余財産分配金は 202.4 円/株.あらま,私の見積りの倍近く.何故,こんなことになったのでしょう?新聞記事に精算人の話が載っていましたが,主因は,

  • 東京都中央区の本社ビル用地の売却益がかなり出た.

    ということに尽きるようです.土地の簿価総額は,(詳細な)中間貸借対照表によると 1,290,000 千円ほどでした.が,想像するに,それらを 2,000,000 千円をずっと上回る価額で売却できたのでしょう.もし私が不動産に精通していたならば,有価証券報告書(土地の場所・面積が載ってます.)を取寄せて,地図を見て,地価を調べて,土地売却益を予想できたはず.特に立川の場合,明治 38 年創業と歴史のある会社なので,土地含み益の匂いがプンプンします.それを裏付ける事件として,昭和 56 年,本社用地を狙って,仕手筋が株式を買占めたこともあったそうな.

    立川さん,復活!

    勉強・努力の不足で,私は大きなお魚を逃がしてしまいましたあ.ふぅ〜.

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