さて,次に,利益配当請求権.企業会計では,必ず損益計算書というのを作ります.次がその一例です.
損益計算書では,売上高や営業外収益や特別利益など収益,売上原価や販売費及び一般管理費や営業外費用や特別損失など費用,そして法人税,住民税及び事業税の金額が列記してあって,全体として
収益 − 費用 − 法人税,住民税及び事業税 = 当期純利益
という計算をして,当期純利益を求めてます.これら収益,費用,法人税,住民税及び事業税,当期純利益は,1 営業年度に関するものです.大雑把に,次図みたいな理解をしとくと良いでしょう.
ここで,問題です.当期純利益は,いったい誰のものでしょう?「従業員のもの?」「ブー.」・・・ちょっとシツコイですね.止めときましょう.株主のものです.そして,この当期純利益に,前期繰越利益を足して,既に払っちまった中間配当金などを引いたりして,当期未処分利益を算出します.そしてそして,当期未処分利益をどう処分するかは,株主総会で決議されます.そう言えば,先ほど,株主総会での利益処分案の承認のとこでも,ちょっと説明しちゃいました.よろしいですか?利益をどう処分するかは,飽くまでも株主総会の権限です.利益が出たら,株主は,当然,株主総会決議を経て配当金をぶん取る権利があります.これが利益配当請求権です.株主は,持株 1 株につき
1 株当り配当金 = 配当金総額 / 発行済株式数
を受け取るのです.
例えば,(株)ユニシロが商品をガンガン売って,損益計算書が先の例の通りで,次のような利益処分を行ったとしましょう.
すると,
12,000 千円 / 600 株 = 20,000 円/株
のお金が,配当金として株主の懐に入る訳です.あなたとクミヤくんは,
20,000 円/株 × 50 株 = 1,000,000 円
ずつのお金を受け取っちゃいます.出資額の 40% じゃないですかあ.たった 1 年分でこんなに・・・おっと,またヨダレが.失礼.
ただ,世の中では,利益に対する配当金の割合が,会社によって結構バラバラです.利益処分は株主総会の権限,とは言うものの,現実的には,取締役会で作った利益処分案がそのまま株主総会で通っちゃうことがほとんどで,世間にはケチな取締役が多いですから,スズメの涙ほどしか配当金が出ない会社も多々あります.大部分が内部留保となってしまうなんてことがザラな訳です.すると,短気な株主は,「せっかく会社が利益を稼いでも,配当金支払いがわずかなら,株主は得しねえじゃねーか?バカヤロー」なんて思ったりします.よくあることです.でも,まあ,落ち着いて,先程の残余財産分配請求権を思い出しましょう.資本は,株主のものでした.利益の内部留保は,そのままそっくり,別途積立金,次期繰越利益などの形で資本に組み込まれます.となると,利益の内部留保も,株主のもんじゃないですかあ.そう,だから,利益が内部留保に回されても,ガッカリしなくてイイのです.
あと,役員賞与金の分は,株主の懐には入りませんが,通常,配当金総額に較べれば額は少ないです.まあ.株主から役員へのお裾分け・ご褒美・寸志ということで,あんまり気にしなくていいでしょう.
という具合で,話をまとめると,結局,利益はぜ〜んぶ株主のもんで,その処分は株主総会の決議事項です.さっきの損益計算書から,(株)ユニシロの株主の皆さんは,1 年で
27,000 千円 / 600 株 = 45,000 円/株
だけのお金が自分の懐に入って来たと思ってりゃいい訳です.出資額の 90% じゃないですかあ.たった 1 年分で・・・おっと,またまたヨダレが.失礼.
さて,株主の権利を見て来ましたが,「残余財産分配請求権があるって言ったって,会社が解散しない限り,そんなもの意味ないよなー.」とか,「株主の権利が,株式の価値や時価に,どうやって結び付くんだあ〜?」とか,思いませんか?これらに関しては,「第 3 話 株式の発行市場と流通市場」と「第 4 話 株式の価値と時価」にて.