債務超過とは

(1999.03.17)


新聞で会社の倒産・破綻などの記事を見ていると,しばしば「債務超過」という言葉を目にします.ここで問題です:「債務超過とはいったい何でしょう?」

債務超過の記事

債務超過.う〜ん,何とも言えないこの響き.とーっても恐ろしいことのように感じられます.そう,とっても恐ろしいことなんです.

恐ろしい債務超過

会社の債務超過は,貸借対照表上の負債(債務)が資産(財産)を上回った状態です.この言葉の出所は,証券取引所の上場廃止基準の「最近 5 年間無配継続,かつ,最近 3 年間債務超過(貸借対照表による)」という件(くだり)のようです.債務超過は,破産原因(裁判所から破産宣告を受ける理由)になり,破産法第 127 条@に「法人に対しては其の財産を以て債務を完済すること能はさる場合に於ても亦破産の宣告を為すことを得」と書かれています.ちなみに,資産・負債は会計用語,財産・債務は法律用語です.どっちでもいいですが・・・

破産宣告

どんな株式会社でも,設立当初は,株主の出資した分だけ資産超過(資産が負債を上回っている状態)からスタートします.債務超過は,損失が積み上がり,株主出資金や留保利益の合計額を食い潰した結果,生じるのです.会社が末期ガンに瀕しているようなものです.
例として,アカジー(株)(架空の会社です.念のため.)が債務超過に陥る過程での,貸借対照表の変化を見てみましょう.

2000.03,最初の株主が出資した 10,000 千円を資本金として会社を設立し,銀行から長期借入金 10,000 千円を調達しました.月末における貸借対照表は右の通り.無難な滑り出しです. 設立
4 月,現金預金の全額 20,000 千円をつぎ込んで商品を仕入れました.月末における貸借対照表は右の通り. 仕入
5 月,商品の半分(仕入額 10,000 千円分)を 15,000 千円で掛売しました.5,000 千円の当期未処分利益が発生し,資本金と合せた資本は 15,000 千円に膨れ上がりました.順調,快調!月末における貸借対照表は右の通り. 掛売
6 月,商品相場が急落し,残っていた商品(仕入額 10,000 千円分)を慌てて売りさばき現金化しましたが,3,000 千円でしか売れませんでした.7,000 千円の損失です.なんてこった!前月までの当期未処分利益 5,000 千円を食い潰し,当期未処理損失 2,000 千円に陥りました.イヤーな雰囲気ですが,まだ資本は 8,000 千円残っています.月末における貸借対照表は右の通り. 商品損切
7 月,得意先が倒産.売掛金の大部分が回収不能になり,貸倒引当金 12,000 千円を計上しました.チキショー!当期未処理損失は 14,000 千円に増大し,資本はマイナス 4,000 千円となりました.ついに債務超過です.ガーン!念のため,「負債 10,000 千円 > 資産 6,000 千円」となっていることを確認して下さい.月末における貸借対照表は右の通り. 貸倒
株主は,会社が利益,そして配当を出してくれることを期待して,出資するはずです.赤字を累積し,出資金を食い潰し,ついには債務超過に陥る・・・そのような会社は,投資価値の無い会社と考えるべきでしょう.上場・店頭公開している会社の中にも,そのような会社が散見されます.要注意.くわばら,くわばら・・・

最後にオマケですが,債務超過に陥った株式会社が解散・特別清算(債務超過じゃなければ,単なる清算ですが・・・)ということになると,株主や債権者の財産的な権利・義務はどうなるでしょう?まず,株主ですが,会社の残余財産(= 資産 − 負債)が無いというかマイナスの状態なので,残余財産分配請求権などの財産的権利はありません.悲ピー.ただし,商法第 200 条「株主の責任は其の有する株式の引受価額を限度とす」により,株主がマイナス分を埋合せる義務を負うことはありません.これが株主の有限責任っちゅーやつです.チト安心.また,債権者の方は,商法第 438 条「会社の債務は其の債権額の割合に応じて之を弁済することを要す」によって債権回収はできますが,何せ,会社の全財産を処分しても債務を完済出来ない状態なので,全額回収は不可能.ミジメ.どの程度回収できるかは,ケース・バイ・ケースです.

債権者 vs 株主


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