会社の成長と株式価値(前編)
〜 配当割引法の定率成長モデル 〜

(1998.11.04,2004.09.21 改訂)


「株式投資入門第 4 話:株式の市場価格と投資価値」では,株式の投資価値を計算する方法の 1 つとして,配当割引法を紹介しました.そこでは,配当金支払時期を一定期間毎,その一定期間を 1 期,1 期 1 株当り配当金予想を一定額 d (≧ 0),更に 1 期当り利子率予想を一定値 ρ (> 0)として,

1 株当り配当割引価値 d
1 + ρ
d
(1 + ρ)2
d
(1 + ρ)3
・・・

d1

×
1 + ρ
1 − 1
1 + ρ

d
ρ

と導いていました.例えば,d = 20 千円/(株・期),ρ = 4%/期 ならば,

1 株当り配当割引価値
d
ρ

20 千円/(株・期)
4%/期

500 千円/株

です.

上記の配当割引法は,とても有益ですが,ちと難点があります.配当金支払間隔一定,1 期 1 株当り配当金予想一定,1 期当り利子率予想一定と,何でもかんでも一定と仮定しちゃってます.これは,問題を簡単化するためですが,それでもちょっとねぇ・・・そういう理由もあって,配当割引法の計算式は,いろんなヴァージョンが考えられています.
例えば,1 期 1 株当り配当金予想が,1 年後 d,2 年後 d (1 + γ),3 年後 d (1 + γ)2,・・・(d ≧ 0,0 ≦ γρ)というように,一定率 γ で定率成長すると仮定した場合,このときの配当割引法を特に定率成長モデルと呼びます.

定率成長モデルの 1 株当り配当割引価値 d
1 + ρ
d (1 + γ)
(1 + ρ)2
d (1 + γ)2
(1 + ρ)3
・・・

d1

×
1 + ρ
1 − 1 + γ
1 + ρ

d
ργ

です.先ほどの d = 20 千円/(株・期),ρ = 4%/期 で計算した例で,更に成長率 γ = 2%/期 を仮定すると,

定率成長モデルの 1 株当り配当割引価値
d
ργ

20 千円/(株・期)
4%/期 − 2%/期

1,000 千円/株

となります.配当金が一定で成長しないときは投資価値 500 千円でしたから,たった 2%/期 の成長でも侮れません.配当金の原資が会社の利益であることを考えると,配当金の持続的成長は,会社の利益成長によってもたらされます.そう,投資価値を決める上で会社の利益成長も重要なのです.

さて,今回の前編では,配当割引法ということで,配当金から株式の投資価値を求める方法について,考えてみました.後編では,配当金の原資である利益・資本(株主資本)に光りを当て,近年注目を浴びている ROE(return on equity,株主資本利益率)を取入れながら,投資価値計算のモデルを考えてみます.乞うご期待.

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