【経営の株主重視・資本効率重視への変化】
経営者の価値観が変化して,経営が米国型の株主重視・資本効率重視(ROE 重視)へ向かう傾向が散見されるようになってきました.理由としては,企業活動・金融の国際化の進展や米国経済の好調があげられます.グローバルスタンダードとしての米国型経営をマネしたいという気にもなります.また,米国を中心とした外国人投資家の株式保有比率が高くなり,外国人投資家の意向を無視できなくなってきたということもあります.最近では,情報通の国内投資家も,株主重視・資本効率重視を意識するようになってきました.これでは,経営者も,投資家のお金を呼び込むために株主重視・資本効率重視を意識せざるを得ません.
ところで,何故,株主重視が株式持合いを解消させる方向へ向かわせるかといいますと・・・もともと,株式持合いは一般の株主の議決権を無力化することを目的としています.会社同士が互いに安定株主になり過半の株式を持ち合えば,見ず知らずの人に経営権を奪われるようなことはない,という発想です.結果として,一般の株主を軽視して,経営者のための経営を導くことになります.これでは,株主重視に慣れた投資家のお金を呼び込むことが出来ません.例えば,米国のカリファルニア州公務員退職年金基金は,日本株を大量保有していますが,今春,日本企業のガバナンス(統治)指針として,「株式の相互持合いを減らすこと」を掲げたそうです(日本経済新聞 1998.05.11 付).したがって,株式持合いを解消する方向へ向かわざるを得ないのです.
それから,何故,資本効率重視が株式持合いを解消させるかといいますと・・・典型的な株式持合いは,会社同士が互いに新株を発行して交換するものです.形式的には有償増資(お金の払込みを受けて新株を発行すること)ですが,実質的には株券という紙切れの交換でお金の払込みはありません.すると,資本(株主から預かっているお金)が増大する反面,財政状態は実質的に変わらず,利益増大への貢献が無いので,資本効率(= 利益 / 資本)が悪化します.これでは,資本効率を重視する投資家のお金を呼び込むことが出来ません.したがって,株式持合いを解消する方向へ向かうのです.
最後に一言.・・・まだまだ,株式持合いで自分の身を守ろうとする経営者は多いようです.でも,投資家も馬鹿ではありませんから,経営者が優秀なら,わざわざ追い出すようなことはしないと思うのです.経営者の緊張感を保って経営成績を上昇させるためにも,株式持合いの解消は望まれます.