山一破綻!(1997.12.06) |
「簿外債務とは何?」 山一証券の巨額簿外債務発覚,そして破綻には多くの人がビックリさせられましたが,この質問に,正確に答えることのできる人は意外に少ないのかも知れません.文字通りに解釈すれば,会社の帳簿に記載されていない債務ですが,もっと具体的に言うと,「有価証券報告書の貸借対照表に(記載されるべきにも関わらず)記載されていない負債」です.
ちと細かいことを言うと,山一証券の件は,「簿外債務」という言葉は不適切だと思っています.というのは,新聞等から漏れ聞いている話では「山一証券は,91〜92年頃に顧客の法人が所有する有価証券を時価よりも高く買い取り,それを90年代後半の今まで所有していたら時価が更に下がって損失が膨らんだ.また,90年頃に自己で買って所有していた有価証券も,時価が大幅に値下がりした.」ということになっています.これらの事実が有価証券報告書の貸借対照表や損益計算書に記載されていなかったというのです.これを分析すると,まず,簿外で有価証券を時価よりも高く買い取ることによって生じたのは「簿外損失」です.そして,所有していた有価証券の時価が下がって生じたのは「含み損」です.
ところで,有価証券報告書というのは,いったい何なんでしょう?これは,会社が大蔵大臣に提出しなければならない書類です.どんな会社も提出しなければならないかというと,そういう訳ではなくて,株式や社債などの有価証券を上場したり店頭公開したりしている会社に限られます(証券取引法第 24 条).有価証券報告書は,大蔵大臣に提出する前に,財務諸表に関して,公認会計士(または監査法人)の監査証明(チェック)を受けなくてはなりません(証券取引法第 193 条の 2).
山一証券の場合,簿外に債務なり損失なりを抱えていたということは,有価証券報告書に,重要な事項に虚偽の記載があったか,記載すべき重要な事項の記載が欠けていたか,いずれかです.証券取引法で言う虚偽記載です.したがって,何人かの人々は責めを負わなければなりません.
「ほんの出来心で・・・」とか「ちょっと間違ってしまいました.ゴメンナサイ.」では済まされないのです.
ではなぜ,有価証券報告書の虚偽記載にこれ程の重い責任が課せられるのでしょう?
そんな訳で,有価証券報告書の虚偽記載は絶対許されないのです.
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