株式の所有者

(1999.11.15)


以前,私は,ある女性から,こんな相談を受けました:「叔父からある上場株券を貰いました.叔父は昨年他界し,その株券は叔父名義のままです.この株式を売りたいのですが,どのようにしたら良いですか?名義を自分のものにする必要がありますか?」

結論から言うと,その株式は彼女のものに他ならず,売却も名義書換も自由に出来ます.
細かいことを言うと,贈与税・相続税など税制上の問題があると思いますが,ここではそれに触れず,商法上の話のみをしましょう.
以下では,商法の条文に基づき,株式の譲渡・名義書換に関して一般的な説明をします.

【株式の譲渡方法】
商法第 205 条 第 1 項:株式を譲渡すには株券を交付することを要す
説明:株式(株主としての地位・権利)を譲渡するためには,株券(株式を表象する有価証券)を交付しなくてはなりません.例えば,「株券を後で渡します」などの契約だけでは,株式を譲渡したことにはなりません.株式の譲渡には,株券交付が必要ですし,しかも通常はそれ以外のことは不要です.

株式の譲渡方法

【株券占有者の資格】
商法第 205 条 第 2 項:株券の占有者は之を適法の所持人と推定す
説明:株券を占有している人は合法的な所持人と見なされます.裏に書いてある名義がどうであれ,とにかく,株券を持ってさえいれば,よほどのこと(盗んだとか,落ちてたものを拾ったとか)が無い限り,その人が正真正銘の株主なのです.売却しようが名義書換しようが,自由です.だからこそ,株式は,簡単な手続により,市場で自由に流通させることが出来るのです.

株券占有者の資格

【株式の譲渡性】
商法第204条 第 1 項:株式は之を他人に譲渡すことを得.但し定款を以て取締役会の承認を要する旨を定むることを妨げず
説明:株式は,通常,自由に他人に譲渡することが出来ます.但し,会社の定款で,譲渡に関して取締役会の承認を要する旨を定めることも出来ます.これは,例えば,一族が支配する中小企業などで,株式が第三者の手に渡って会社を乗っ取られたりすることを予め防ぐための例外的措置です.株式を公開(上場 or 店頭公開)しているような会社の株式に関しては,そのような譲渡制限を定めていることは,絶対有り得ません.なぜなら,流通市場で自由に流通させることが出来なくなってしまうからです.

【株式移転の対抗要件,株式の名義書換】
商法第206条 第 1 項:株式の移転は取得者の氏名及住所を株主名簿に記載するに非ざれば之を以て会社に対抗することを得ず
説明:株式を取得しても,名義書換を行って株主名簿に氏名・住所を記載してなければ,会社に株主としての権利を主張できません.会社は,株主名簿に載っている人だけを株主として扱っていればよいのです.これは尤もなことです.というのは,株式の譲渡・流通は原則自由で,会社の預かり知らぬところで株式の移転が行われ,名乗り出てもらわなければ株主として認める術が無いからです.

株式移転の対抗要件,株式の名義書換

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