株式分割のメリット等(1998.04.26) |
以前,私は,ある女性から,こんな要望を受けました:「株式分割を本で調べたところ,『株式分割を行って発行済株式数が増加しても,株主の持分である株主資本には変化がないため,株価が分割比率に応じて理論上は下がることとなります.』と書いてありました.でも,これでは,誰にどんなメリットがあるのか?配当とはどのように違うのか?分りません.また,『資本準備金を資本金に組み入れる株式分割も増資の一種』とも書いてありました.何のことか分かりません.教えて下さい.」
まず,株式分割のメリットから.例えば,1 株を 2 株に分割すると,株数は 2 倍になりますが,1 株あたりの資本(= 株主資本)や利益は 1/2 になるので,資本・利益に関する株主の持分は変わりません.しかし,株主・投資家にメリットはあります. 【株式分割のメリット → 株主・投資家が享受】
株式分割は,直接的には「増配」(1株当りの配当金を増やすこと.)と同じ効果をもたらします.株主にとっては嬉しいことです.経営者から見れば損のような気もしますが,株主に報いるという意味があります.株主は会社のオーナーな訳ですから,それくらい気を遣ってもらって当然!!なんですけどね. 次に,株式分割と配当金との違いですね. 【株式分割と配当金との違い】 昔は,配当には,現金による配当金の他に「株式配当」というものもありました.決算期末に 1 株につき 0.1 株とか新しい株式を発行して株主に与えるものでした.これは結局は株式分割と同じことです.私が知っている例では,映画会社の「にっかつ」が上場されてたときに(懐かしいですねえ.)よくやってました.現在は,配当は現金で行うことになっています. 最後に,資本準備金を資本金に組み入れる株式分割による増資の件ですね.まずは,資本金とか資本準備金とかの意味から.企業は,資金調達してそれを元手に活動し,利益をあげたら配当金・役員賞与金として支払って残った分をも元手に付け加えて更なる活動を続けていきます.企業の資金を調達手段によって分類すると以下のようになります. 【調達手段による資金分類】(→貸借対照表の右側を参照)
株式分割をする場合,商法の「資本金は,『株式額面 × 発行済株式数』を下回ってはならない」という規定に気を付けなければなりません.発行済株式数が増えるからです.もし,この規定に引っ掛かりそうになったら,資本準備金・利益準備金・剰余金の一部あるいは全部を資本金に組み入れて,規定をクリアするようにします.このとき,資本金が増えるので,「増資」と呼びます. 【商法の株式分割への影響】
この増資の場合,資本(= 株主資本 = 資本金 + 資本準備金 + 利益準備金 + 剰余金.何と!「資本」と「資本金」は意味が違うんですねえ.しかも,商法では,「資本」という言葉を一般に言う「資本金」の意味で使ってたりします.ああ,ややこしい!!!)の総額には変化はありません.お金の払込みが行われないので,このような増資を「形式的増資(無償増資)」と呼んでいます.余談になりますが,「実質的増資(有償増資)」という増資もあります.この場合は,お金と引き換えに新株を発行するので,資本の総額は増えます. |
ホームへ帰る |