資本主義とは

(1999.05.17,2002.10.26 改訂)


「資本主義とは何?」この質問に,簡潔に答えてくれる人はかなり少ないのかも知れません.「マルクス主義的な理解に基づくと・・・」な〜んてのはご免ですし・・・取敢えず,広辞苑(第 4 版,岩波書店)で引いてみました.
  • 資本主義
    封建制度の後を継ぐ人類社会の生産様式.商品生産が支配的な生産形態となっており,あらゆる生産手段と生活資料とを資本として所有する有産階級(資本家階級)が,自己の労働力以外に売るものをもたない無産階級(労働者階級)から労働力を商品として買い,それの価値とそれを使用して生産した商品の価値との差額(剰余価値)を利潤として手にいれるような経済組織.
難し過ぎて・・・

どうです?ぐっすり眠れましたか?
取り敢えず,キーワードの解釈から始めましょう.まずはっと,登場人物に注目!資本家さんと労働者くんです.

  • 資本家
    資本を所有し,それを貸し付け,またはそれを出資して労働者を雇用・使役し,利潤を収得する人.ここで言う資本は,事業の成立・保持に要する元手,営業の資金.

  • 労働者
    労働力を資本家に提供し,その対価として賃金を得て生活する人.
資本家と労働者

こんな説明を聞くと,何となく,「資本家は,働かずに利潤を得るなんてズルイ!労働者は搾取されてかわいそう.資本家なんか,居なくなっちまえばイイのに」と思われるかも知れません.でも,よ〜く考えて下さい.資本家が居ないと,労働者はとっても困るんです.労働者が活躍する場を作れなくなっちゃいます.例えば,私のお友達は,まいにち会社へ行って,椅子に座って机上のパソコンを使って産業用ロボットを設計したり,工具を使ってロボットを試作したりして,賃金を貰う労働者です.もし,資本が提供されなかったら,会社の建物も,椅子も,机も,パソコンも,工具も,試作ロボット部品も,な〜んにも無くて,私のお友達は仕事が出来ず,賃金も貰えません.そう,資本家は必要なんです.

資本家は必要

もちろん,労働者も必要です.資本が腐るほどあって,会社の建物も,椅子も,机も,パソコンも,工具も,試作ロボット部品も,な〜んでもゴージャスで立派なものを揃えても,そこで働く労働者がいなかったら,それらは無意味で,資本がホントに腐っちゃいます.資本家が労働者を兼ねるにしても,出来ることは限られますし・・・という訳で,労働者も必要なんです.

労働者も必要

次にっと,剰余価値に着目!

  • 剰余価値
    資本家が支払った労働力の価値(賃金)以上に労働者によって生産された価値.企業利潤・地代・利子などの所得の源泉となるもの.
労働者が働くと,原材料から製品が作られたり,お客さんにサービス施したりというように,付加価値が生じます.この付加価値と労働者の賃金との差額が剰余価値です:

剰余価値 = 労働によって生ずる付加価値 − 労働者の賃金.

この剰余価値は,基本的に資本家が利潤として受取ります.通常は,

剰余価値 ≧ 0

すなわち,

労働によって生ずる付加価値 ≧ 労働者の賃金

です.となると,「やーっぱり,資本家はズルイ!労働者から上ッパネを取りやがって.剰余価値なんか,無けりゃイイのに」と思われるかも知れません.でもでも,よ〜く考えて下さい.もしもぅ〜,

労働によって生ずる付加価値 < 労働者の賃金,

すなわち

剰余価値 < 0

とすると,資本家は,せっかく資本を提供しても,何の見返りも得られないどころか,損失を被ることになります.これじゃあ,資本を提供する気持になれません.資本が提供されないと,結局,労働者が困ります.やっぱり,剰余価値は必要なんです.

剰余価値は必要

どうでしょう?資本主義が見えて来ましたか?まとめると:

資本家は資本を,労働者は労働力を,それぞれ提供する.労働によって生ずる付加価値は,労働者の賃金剰余価値とに分配される.剰余価値は資本家が利潤として収得する.これが資本主義なんです.

資本主義まとめ

ところで,察しのイイ方は,もうお気付きでしょう.「あれ?資本主義って株式会社制度と似てるやん?」そう,その通り.株式会社制度は,資本主義を法律でルール化して具現化した制度に他なりません.資本主義,株式会社のキーワードを対応付けてみると,

資本主義 株式会社制度
資本家 株主,債権者
労働者 取締役,監査役,使用人(従業員)
剰余価値 利益(⊇配当金,内部留保),支払利息

こんなこと知っちゃうと,「サラリーマンで汗まみれになって出世して取締役になってイザとなったら詰め腹切らされたりするより,カネ貯めて株主・債権者になってノンビリしよっと」なあーんて目論んじゃいますね.実際,私のお友達には,その辺りの事情を考えて人生設計を考えている人がいます.若いうちは労働でお金を溜め込んで,加齢とともに少しずつ資本家に転じようと考えているのです.彼曰く,「20 代くらいならガンガン働けるけど,30 超えた辺りから無理出来なくなるじゃないですか.それに,社会全体のこと考えれば,年寄りは,労働で力を発揮するチャンスを若い人に譲って,自らは資本家として,彼らに出融資する立場に回るべきですよ.」涼しい顔でのたまってますが・・・はてさて

人生設計

「資本主義ってどういうこと?」は,これにてオシマイ.


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