はじめに

(1997.12.01 初版,2002.10.27 改訂)


株式投資入門の目的は,「一人でも多くの人が,株式に関する正しい知識を持ち,市場価格の動きに惑わされず,株式の価値計算に基づいた売買判断能力を持つ」ための一助となることです.
私達は,幸か不幸か,資本主義の世の中で生きています.資本主義を法律でルール化して具現化した仕組が,株式会社制度です.しかし,私は,ときどき,「果たして,株式の意味を知ってる人(とくに投資家)ってどれくらい居るんやろか?」と心細くなります.と言っている私自身,中学生の頃,社会科の先生から「株式会社の社員は有限責任社員です.」と聞いてから,ずーっと,「そうかあ,会社潰れたら,サラリーマンも借金取りに追っ掛けられるんだあ.有限責任とは言え,大変ですねぇ.」なんて信じてました.そう,「社員=株主≠サラリーマン」であることすら知らなかったのです(T_T).

社員=株主≠サラリーマン

その程度の知識で株式市場に打って出る人は,後を絶ちません.私もそうでした(^_^;).でも,今になって思うとゾッとします.株式の意味も知らずに株式投資を行うということは,鑑定能力無しで骨董品屋を営むようなものです.ゴミ同然品をすっ高値で掴まされてもそれに気付かないでしょう.一生気付かなければ,それはそれで幸せな人生なのですが・・・

無知の危険性

株式に関する知識・思慮が欠如しいる人は,株式の価値を適切に判断する能力を持たない訳で,根拠も無い噂,勘や時価の動きに振り回されます.そしてしばしば,株式を,異常に高い値段で買ったり,異常に安い値段で売ったりして,結局,損を出すんです.
実際,私の所には,「昨日 ○○○ の株買ったら,今日ストップ安になってしまいました.売るべきでしょうか?」みたいな相談メールが来たりもします.お気の毒なことではあります・・・
私自身も,学生の頃のバブル絶頂期(忘れもしない '89.12,日経平均株価が史上最高値を付けた月でした.)に株式投資に参入し,やはり,いろいろおバカなことをしては手痛い目に遭って来ました.それで慌てて勉強し出して,株式市場を注意深く眺めて来ました.そうこうして,「バブル崩壊を経験して,俺もみんなも賢くなったろうし,あんなバブルを目の当たりにすることは当分無いんだろう.」と思いきや,バブル崩壊からほぼ 10 年目(1999 年〜2000 年),ネットバブルなるものが発生・崩壊しました.3 か月で 4 倍にも値上りした株価がその後の 1 年で 1/50 程度に値下りしたり(100 万円 → 400 万円 → 2 万円),信じられないことが現実に起こりました.「株式の意味を理解し価値計算能力を持ち,冷徹な判断をすれば,赤字脱却の目処が立たず配当も出来ない会社の株式に大枚を投ずることも無かったろうに」と思うのです.

ネットバブルの発生・崩壊

また,株式投資を行わないまでも,株式会社の利害関係者は,株式の意味を知っておくべきでしょう.経営者は,株主の財産を預かって運用していることを,しっかり認識すべきです.例えば,「会社の資本は,自分達,経営者・従業員の共有財産である」と錯覚している人達がいます.が,資本の所有者である株主にとっては,はなはだ迷惑なことです.なぜなら,経営者・従業員によって,株主に無断で資本を食い物にされる可能性が生じるからです.もし食い物にしたら,それは犯罪(横領,背任,特別背任)です.

会社のカネは株主のもの

株式投資入門が,株式に関する正しい知識の普及の一助となれば,幸いです.


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